
New Orderの呪縛から解き放たれた珠玉のロックアルバム
ディヴィッド・ポッツは、90年代にピーター・フック(元New Order)のサイドプロジェクトであるRevengeに参加し、その後はMonaco、Peter Hook And The Lightのメンバーとして常にフックと活動を共にしてきたマンチェスター出身のソングライターだ。
Monacoへの参加
彼の名前が知られることになったのは、やはりMonacoでの活動だろう。
Monacoはフッキーとポッツのプロジェクトであり、1997年から2001年にかけて2枚のアルバムと6枚のシングルを発表。なかでもシングル『What Do You Want From Me?』はキャッチーなメロディにより本国でスマッシュヒットとなった代表作だ。
しかし当時のMonacoの評価は「ほぼニュー・オーダー」「フッキーがソロでやりたかったのはコレなの?」と、本体との類似性を指摘されただけでなく、ポッツに関しては「バーニー(New Orderのフロントマンであるバーナード・サムナー)に声が似ている」「思い通りにならないバーニーの代わりに探してきたコピー」などという、音楽性には直接関係のない誹謗中傷とも言える声が多かったのも事実だ。
Ram始動
そんなこともあってかどうかは分からないが、Monaco終了後のポッツはRamという自身のユニットで活動を開始する。
Ramは2001年にアルバム、2002年から2004年までに3枚のEPをリリースするも、残念ながらほとんど話題にもならずに消滅。
もともとソロプロジェクトに近いものだったようで、リリースした作品は後にポッツ名義に変更され、現在は各音楽サイトで配信されている。
ソロ活動スタート
次にポッツが戻ってきたのは2年後の2006年。突如ソロ名義でのアルバム「Coming Up For Air」を発表する。

このアルバムは本国イギリスだけでなく、なんと2曲のボーナストラックが追加された日本限定盤もリリースされ、さらにはジャパンツアーも敢行されるなど、当時は「えっ?何で??」(失礼)と驚いた記憶がある。
「Coming Up For Air」は伝統的なUKロックサウンドをベースとした素晴らしい作品で、そのクオリティの高さから今後はソロでやって行くのだろうと期待したが、またしてもそのままフェードアウト。
Peter Hook And The Lightへ加入&ソロ活動再始動
そして2013年、ポッツのPeter Hook And The Light加入が発表される。

いつまで経っても結局はフッキーかよ!と正直ズッコケたが、バンドメンバーとして精力的にライブ活動を行う傍ら、2021年に久々のソロ曲「Drowning」を配信限定でリリース。
その後も「Show Me Love Show Me Life E.P.」、「My Satellite EP」と立て続けに新曲をリリースし、俄かにポッツ周辺が騒がしくなってきたところで、満を持して2024年3月にリリースされたのが本作「The Blue Tree」と「The Red Tree」という2枚のアルバムだ。
The Red Tree / The Blue Tree
「The Red Tree」「The Blue Tree」共に12曲が収録されている。
別々のアルバムとしてリリースされているが、様々なトラックがバランスよく振り分けられており、2枚組のアルバムとして捉えたほうが良さそうだ。
ポッツの音楽的なルーツはビートルズを代表とする60-70年代ロックにあることはデビューアルバム「Coming Up For Air」でも明白だが、今作ではそこに現代的なエッセンスを巧くブレンドし、「2024年のロックアルバム」として仕上がっている。
約半世紀前に赤盤・青盤として撒かれた種が、赤い木と青い木となって成長したと解釈するのはやや大袈裟過ぎるかも知れないが、ビートルズ世代からマッドチェスター界隈まで幅広い層のリスナーに聴いてもらいたい名盤であることには間違いない。



